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エッセー&小論

"音読"をしましょう

歌手・「デュークエイセス」リーダー
谷 道夫
(2007年9月発行 会報第112号より)

 もう七・八年も前のことになりましょうか。夜帰宅してテレビのスイッチを入れましたら、ちょうどニュースの時間で「今日は、千葉市では港開きが、華やかに繰り広げられておりました」と、アナウンサーが告げておりました。この、華やかに繰り広げ……うんぬんは言いにくい言葉だな、と思って一人ですぐ口に出して言ってみて、ビックリしました。言葉がつっかかり、ろれつが回らなくてうまく言えませんでした。

 私はがくぜんとしてしまいました。こんなことでは、口のリハビリを始めなければならないと思いました。

 人間、老化が始まるとしたら足から、腰からとはよくいわれますが、歌を歌う私にとっては口が危うくなってきたのはショックでした。「うちのじいさん、死ぬまで口は達者だったよ」と、よく聞くだけにすっかり私は慌ててしまったのです。

 そんなわけで谷式とでもいうべき「早口鍛錬法」なるものを作って実践しています。特に難しいことをするわけではなく、早口言葉に出てくるような、言いにくい言葉をたくさん集め、それをつづけて三回ずつ大声ではっきりとしゃべることを日課としています。朝の五分間です。

 お決まりの「生麦生米生卵」から始まって「新進シャンソン歌手による新春シャンソンショー」「しじみ汁付きちらしずし百八十円」「青巻紙、黄巻紙、赤巻紙」などです。

 回文も言いにくい言葉が多いようです。ミガカヌカガミ、カンケイナイケンカ、ウツイケンシワシンケイツウ、カルイキビンナコネコナンビキイルカ、……探せばいろいろとあるものです。

 この早口言葉ははっきりと発音することも肝心ですが、順番を間違えないようにします。そのうち暗記してだんだん早口になって、時間も縮まって来ました。

 早口言葉はさておいて、口の筋力は脳の血流をよくするといわれています。「しっかりかむと頭が良くなるよ」と、昔おばあさんによくいわれたものです。

 文章を声に出して読むことの少なくなった今日、耳から脳へと伝わってゆく効果も考え、言葉のひびきや表現の多彩さ、それに名文を音調にして味わい自分のものにする大切さを感じました。

著者紹介

歌手・「デュークエイセス」リーダー    谷 道夫

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