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エッセー&小論

「哲学」ってなんだろう?

編集者
松田 哲夫
2013年9月発行 会報第10号より
いまから約四半世紀前、哲学者の鶴見俊輔さんを中心に、『ちくま哲学の森』を編集したときのことです。鶴見さんは、他の編者やぼくたち編集者を前にして、こういう風に語り出しました。「哲学とは何か? それは、あらゆる問題を、自分が今いるところで考える方法なんですね。だから、哲学は哲学書や哲学講義の中にだけあるのではないんです」
 鶴見さんは、いくつか具体的な文章をあげて、その哲学的な意味を語った後に、「私たちの暮らしのなかや、それを綴った文章のなかにも、根本的な問題を考えるためのヒントはちりばめられている」と語り、「大事なことは、自分で考えることです」と締めくくりました。
 一昨年、あすなろ書房さんから、好評だった『中学生までに読んでおきたい日本文学』(全十巻)に続いて「『哲学』のシリーズを」というご提案をいただきました。「哲学」を系統的に読んでいない私は、鶴見さんの言葉を思い出しながら、いろんな本を読んでみました。そして、学者、思想家、小説家、詩人、劇作家、俳優、芸術家など多彩な書き手による、味わい深い文章を選んでいきました。大事な問題を考えるヒントになるだろうエッセイ、随筆や小評論。面白くて考えさせられる掌編小説や落語。テーマ別にわけてみると、『中学生までに読んでおきたい哲学』全八巻にまとまっていきました。
 それでも、この哲学の世界を私ひとりでガイドするのは力不足だと感じ、友人のイラストレーター南伸坊さんに相談しました。南さんとは、よく、「子どもって哲学者だよね。『死んだらどうなるの?』とか『自分って何なの?』といった根源的なことを問いかけてくるじゃない」というような話をしていました。その上、南さんの素晴らしいところは、そのまんま子どもになることができるところです。そういうスタンスで、河合隼雄さん、養老孟司さんなどと対話した本も出しています。南さんに、この哲学アンソロジーの「案内人」になってほしいとお願いしました。彼は快く引き受け、各巻の巻頭に、哲学的な、とぼけた漫画を描いてくれました。こうして、楽しくて奥が深いシリーズができあがったのです。

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編集者    松田 哲夫

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