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紙いろいろ

感熱紙のしくみ

キュレーター・紙エッセイスト    植地 勢作
2013年9月発行 会報第10号より
私たちの身の回りには色々な感熱紙があふれている。POS、軽量ラベル、商品の値札、乗車券、配送ラベル、荷札、チケット、医療ラベル、ハンディターミナル、ファクシミリなど枚挙にいとまがない。 
 感熱紙は、基紙と呼ぶ紙やフィルムの表面に発色層(感熱層ともいう)が塗布されており、サーマル(感熱)ヘッドの熱に感じて発色する(図1)。発色層の主材料はロイコ染料と顕色剤(酸化剤)である。ロイコ染料のロイコとはギリシャ語で「白色の(leukos)」という意味で、還元されて白色や淡色の状態になった染料の前躯体である。ロイコ染料と顕色剤に熱を加えると両成分が溶融して分子レベルで接触して発色する。しかし、この反応は可逆反応であるため、折角発色したものも時間が経つと徐々に色が消えてしまう。ポケットの乗車券の表示が消えてしまったり、保存しておいた領収書の文字が薄れてしまったという経験をしたことが多いのではなかろうか。感熱紙は保存性に欠けるというのが難点であった。もうひとつ、少ないエネルギーで発色させるための高感度化が大きな課題であった。
 高感度化のためには、発色材料、とくに増感剤の開発と、サーマルヘッドの熱を有効に働かせるため断熱性の高いアンダーコート層を設けること(図2)、それに発色材料の比表面積を多くし、またメカノケミカル効果により材料表面を活性化させ反応性を向上させることがされてきた。
 保存性の向上のためには、保存性を阻害する物質と接触させないようにオーバーコート層を設けたり、エポキシレジンなどの安定化剤を用いることもある(図3)。また、耐油・耐可塑性に優れた顕色剤の開発が進み、高感度で安価・高保存性の感熱紙が商品化されている。
 また感熱紙には、ドット再現性、諧調性、高解像性、印刷適性、耐水・耐油性(食品)など様々な工夫がされている。
 基紙は、用途に応じてフィルム、不織布、布なども用いられる。

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