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紙いろいろ

フツ―でない‘普通紙’

キュレーター・紙エッセイスト    植地 勢作
2012年9月発行 会報第7号より

 コピーしていて、印字がはげ落ちていたり、トナーが飛び散ったり、あるいは、紙詰まりを起こしたり、2枚重なって出てきたりしていやな思いをしたことはないだろうか。今回はコピー用紙、その中のPPC(Plane Paper Copier、普通紙複写機)用紙について考えてみよう。
 PPCの基本技術はアメリカのカールソンによって発明され、1951年ハロイド社(後のゼロックス社)によって初めて製品化された。同社は1954年に‘ゼロックス914’を発売、レンタルシステムを取り入れて導入を促進し、これにより複写革命が始まったといわれている。
 PPCの複写方式は、原稿からの反射光を帯電させた感光体に投射して静電潜像を作り、露光によって電荷が失われなかった部分にトナーをのせ、これを紙に転写して、熱融着させるというものである。 
 PPC用紙は‘普通紙’と呼ばれ、見掛け上は一般の上質紙と変わらないが、実は目に見えないところで様々な工夫がされている。トナーを紙にきれいに転写させるために紙の体積抵抗を109~1010Ωに収める必要がある。抵抗値がこれより高いとカブリといってトナーの飛散が起り、低いとトナーがしっかり定着しない。また、トナーの物理的な固着力を高めるためには平滑性を最適のレベルにする必要がある。紙が重なって出てくるいわゆる重送は、紙の静電気のほか、上下の紙の平滑性の差、あるいは紙の端面がくっつく、いわゆるブロッキング等によって引き起こされる。また、ジャミングといって紙が詰まってしまうことがある。これは、おもにトナーを定着させるための熱により紙がネジレたりカールしたりすることによって引き起こされる。熱によって変色しないことも大切である。しかも、高温高湿、常温常湿、低温低湿いかなる環境条件のもとにあっても品質が安定していなければならない。
 PPC用紙は‘普通紙’と言いながら、その実、極めて厄介な紙なのである。
(キュレーター・紙エッセイスト)

図1
複写革命の発端となったゼロックス914
(富士ゼロックス提供)

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