JavaScriptが無効になっています。
生活の知恵として、掃除の際、水に浸した新聞紙を使って埃が立たないようにししたり、新聞紙を湿らせて野菜を包み冷蔵庫で保存することがよく行なわれる。これは新聞紙の吸水性や保水性を利用したものであるが、昔から変わらないように見える新聞紙もその特性はある時期を境に大きく変化している。 グーテンベルクが発明した凸版印刷(活版印刷)は長い間印刷方式の主流の座を占めていた。オフセット(平版)印刷が主流になってからも新聞の印刷は相変わらず凸版印刷であった。ちなみに、新聞の輪転印刷は明治22(1889)年に朝日新聞社がマリノニ輪転印刷機を導入したことに始まる。新聞というと、教科書に載っていた鉛版が記憶に残っていると思われる。ところが、1975年頃から大変革が始まり、1990年頃には凸版印刷はほぼ駆逐され、オフセット印刷一色となった。すなわち、凸版印刷はオフセット輪転印刷にとって代られたのである。その理由は、コンピューターにより版組みを直接行なうダイレクト製版が可能になったということ、さらに、紙面の多色化の要求に対応するにはオフセット印刷の方が適しているということが大きい。これに、用紙の軽量化への要求が加わって、現在の新聞用紙が出来上がったというわけである。 「糊はなくても紙はできる」と本誌第2号に紹介したように、凸版印刷の時代の新聞用紙は紙の原点そのもので、基本的に糊を使わないため、吸水性・保水性はともに高く、掃除に最適であった。オフセット印刷は、「水と油は互いに混じらない」という性質を応用した印刷方式であり、当然のことながら用紙には高い耐水性が要求される。逆に、吸水性・保水性はともに低下した。そして、新聞紙による掃除の効用は昔より劣るということになった。逆に、濡れても破れにくくなった分、野菜の保管には好都合といえる。 (キュレーター・紙エッセイスト)
当ホームページ掲載の記事、写真、イラスト等の無断掲載を禁じます。
COPYRIGHT©2012 SCHOOL LIBRARY BOOK ASSOCIATION. ALL RIGHTS RESERVED.