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著者からのメッセージ

翻訳以前のことなど

   小島 俊明(訳)
(2006年9月発行 会報第109号より)
 翻訳は外国語を日本語に置き換えることですが、ただ置き換えればいいというものではありません。仕事にとりかかる以前に解決しておかなければいけないことがあります。

 まず、大きく分けて、実用書か文学作品かを見わけることが大事です。実用書のたぐいなら、専門分野の知識が必要ですし、専門用語をマスターしていなければなりません。文学作品なら、文学の素養が要求されます。

 文学では文体が重要視され、どういう文体の日本語にするか、それが問題です。児童書なら児童向けの言葉遣いにしなければいけません。サンテグジュペリの『星の王子さま』の場合、児童文学なのかそうではないのか、作者はどういう読者を想定しているのか、それを考えなければいけませんでした。私の新訳ではここが最初の重要なポイントでした。

 ローマ数字や条件法過去第2形や自由間接話法が使われているフランス語が児童向けとは考えられません。ところが作者自身の描いた挿し絵は、児童でも楽しめます。語り口は大人の中の子どもに向いていて、しかも奥行きが深く、なかなか一筋縄ではいきません。子どもも楽しめて、大人には読み応えのある文体を目指しました。
本イメージ
「新訳 星の王子さま」
中央公論新社刊
定価 1,575円
小学校高学年・中学校・高等学校

著者
小島 俊明(訳)

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