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著者からのメッセージ

水俣病は人類の未来への警告

   矢吹 紀人
(2008年9月発行 会報第115号より)
 今年一月、日本人が経営するニューヨークの高級寿司店で、マグロから高濃度の水銀が検出され問題になりました。この事実を報じたニューヨーク・タイムズは環境中の水銀汚染を警告し、「日本は水俣病を経験したのに反応が鈍い」と政府の対応を切り捨てました。

 火力発電所や工場などが排出する水銀が食物連鎖で人体に侵入する危険性に対し、アメリカやEUなどの国々は早くから水銀規制に努力してきました。これらの国に警鐘を鳴らしたのは、水俣病に冒された胎児性患者などの衝撃でした。

 板井八重子医師は水俣の病院に二〇年近く勤務し、流産や死産を経験した女性の多さを感じていました。胎芽期の水銀汚染研究が皆無に近かったなか、汚染地域の女性たちから体験を聞き取って統計にまとめ、水銀は人間の胎芽期にも影響を与え、生まれ得ない命が多数あったことを証明しました。しかし、その後も日本の行政は研究も規制も進めず、国際化学物質安全性計画の水銀規制強化案には反対工作までしたのです。

 水銀汚染で生まれ得なかった胎児と板井医師が心の中でかわした約束は、子どもたちの未来に水俣病の禍根を残さないことでした。この現実に多くの人が早く気づき、地球規模の水銀汚染防止に力となることを願います。
本イメージ
水俣 胎児との約束
大月書店刊
2,100円
高等学校

著者
矢吹 紀人

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