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本のかたち

製本の『本』

ブックデザイナー    辻村 益朗
(2004年4月発行 会報第102号より)

 本の形づくりは、和装本、洋綴じ本いずれもその製本方法によるので、ここで一冊の本を紹介させていただく。

 それは子どもの本の大先達、武井武雄先生の図解で製本を解説した珍本、『製本之輯(しゅう)』(1941年書物雑誌「書窓」第11巻第2号)です。解説文は明治から昭和初期にかけて斯界(しかい)に名をはせた製本職人、上田徳三郎の口述によっています。

 武井先生は本づくりがお好きでしたから当然かもしれませんが、上田翁の実際の作業を写生され、それに基づいた図解なので、製本の作業過程が大変分かりやすく描かれています。その図は具体的で明解、正に説明図のお手本といったところ。私は製本や補修で困ったときには、よくこの図のお世話になります。

 写真はこの本の表紙で、そのものが一つの見本となっています。これは普通の和本の綴じ「四つ目綴(よつめとじ)」のように見えますが、上下の角を二重に綴じた「康煕綴(こうきとじ)」とよばれるものです。表紙は印刷で紺の地色に花のカットが入り、外題(げだい)(タイトル)と目次項目、2枚の題簽(だいせん)がはられたお洒落な和装本です。

 なお、この本について武井先生のご令嬢、三春さんに伺った折に、『製本之輯』を原本として改編復刻された本が、オンデマンド(トランスアート発売)であることを、ご教示いただきました。

102

V・フォッパ(1427頃~1515頃) 「本を読む少年キケロ」 The Wallace Collection,London

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