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本のかたち

巻子本

ブックデザイナー    辻村 益朗
(2003年11月発行 会報第101号より)

 書物の古い形は巻物で、「巻子本(かんすぼん)」とよばれます。初期の本は、主に紙を使った東洋だけでなく、パピルスや獣皮製の西洋でもみな同じ形です。書写材料を長く継ぎ合わせて巻いただけの原始的な造本ですが、今でも書物を一巻二巻と数えるのはこの名残りです。

 巻子本は中国では漢から唐にかけてあり、日本は奈良朝からで、江戸時代に入ってもまだつづいていました。取り扱いは簡単なようですが、途中を見たいときには、広げてからまた巻きもどすという、厄介な書物でした。室町時代から江戸時代中期にかけての、巻子本の一般的な内容は『文正草子』などのお伽草子で、冊子型の奈良絵本と共に多くの絵巻がつくられました。

 絵巻はよく展覧会などでは、一巻分が横に長い展示ケースに広げられていて、それはそれでとても有難いことです。しかし、絵巻を端からずっとたどる見方は、本来の絵巻の見方とは少し違っていることを、知っておいてもよいでしょう。

 絵巻は大広間に広げて見るものではなく、自分の左手でひらき、右手で巻きとりつつ、左方向へと見ます。しかし、ただゆっくり進むのではなく、肩巾より少し広い50~60センチをひと場面として、場面を移動させながら見ていきます。

 たいていの絵巻は、異時同図法(異なった時間の出来事を同一画面上に描く)で描かれていますので、このくらいの長さが、一場景としてまとまりよく見られます。しかし、実際問題として、絵巻の閲覧ができる図書館はまれですから、ケース内の展示作品などを、自らの手で巻き広げていると想像しながら……場面転換を楽しむことになるでしょう。

 なお、最近はインターネット上やCD-ROMで一部の絵巻をひと場面ごとに見ることができ便利になりました。

巻子本の書名をかいた貼り紙は題簽(だいせん)という

*巻子本の書名をかいた貼り紙は題簽(だいせん)という。
*4世紀ローマの浮彫りの画面に巻物の内容を記した札がみえる。この札のラテン語「ティトゥリ」が後にタイトルの語となった。

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