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本を外形から眺めると、大抵は表紙や背のどこかに題名や著者名などが入っています。また、ごく普通に本を棚に並べるとしたら、たぶん背文字が見えるように立て掛けて置くことでしょう。
ところが、冊子本という形は西欧で4世紀以降からの長い歴史をもちながら、背などにタイトルが入るのは、あまり古いことではありません。フランスやイタリアなどでも個人の蔵書で書棚の本が、背の題名をこちらに見せ、立て掛けられて並ぶのは、16世紀後半から17世紀初めころのようです。それ以前では、割合、平置きや平積みが多く、装丁自体は装飾工芸的に発展しても、題名を入れたりするのは後回しでした。個人の蔵書では、冊数が幾らか増えたとしても、造本の形で区別がつく程度だったのでしょう。
図書館などで、本の表紙の端を書見台と鎖で繋いだ中世からの習いで、本の前小口を手前にして棚に置く場合には、題名や著者名などを書いた紙片を、折り曲げて外から見えるように、見返しに貼り込んだりしました。16世紀に入って印行本が増えてくると、背に題名などの情報が必要になり、それらを、空押しや金箔押しで表示して、やっと本の背はこちらを見せて書棚に納まることになったのです。
背がこちらにむくと、本を取り出すのに、上方に指をかけることから背や綴じが痛みやすくなりました。指のかかるところを丈夫にする必要がでてきたのです。やがて、背の上端を強化した部分が装飾も兼ね独り歩きして、「ヘッドバンド」――花布と呼ばれるものになったのでした。
伝統的な花布は、折り丁の頂(底)部に芯になる革や籐を置き、そこを2~3の色糸で括りつけ、編むように縢ります。しかし現在では、特殊な一品製本を除いて、花布を模したテープ状の織り布を、折り丁の上下に貼りつけて飾りとしたものが、通常の上製本に見られる花布です。
花布は端布とも書き、ヘッドバンドから転訛してヘドバンとも呼ばれています。
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