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編集者のアンテナ

「ウソはやっぱりいけない」

くもん出版    長谷 総明
(2007年4月発行 会報第111号より)
 「ウソ」といったとき、世間一般ではことばでつくウソを考えがちです。ことばは、その人が日ごろ思っていることのあらわれですから、聖書では口を慎みなさいと戒めています。「ウソ」は、単に口(ことばだけ)の問題だけではなく、「思い」や「行い」をもあらわしているのでしょう。「ウソ」の本質は、まさに人間の罪の問題なのだと、常日ごろまじめに考えているわたしのところに、なんと丘先生のこの原稿がやってきました。

 しかし、読んでみると面白いのです。ついウソをついてしまう主人公リュウの、ウソではない、実に正直な立場で展開するストーリーなのでした。

 刊行にあたり、丘先生に内容を再三推敲していただきましたが、なんとかタイトルから「ウソ」ということばを消して、「正直に生きる」とか「真実の強み」等々にできないものかと、ひそかに考えたりもしました。

 いろいろ考えながら、何度も作品原稿を読んでいるうちに、あることに気がつきました。それは、ユニークな登場人物のオカマのバブちゃんと学校では一切しゃべらない京子の共通点でした。バブちゃんは自ら、「全部ウソの人生を生きている」と言いきっていました。京子は学校から離れた地域(町内)では評判の「いい子、明るい子」でした。2人とも表向きはウソの生き方をしているんだ、と最初はリュウも思っていますが、後半になると、リュウの見方が変わってきます。かれらは、その正反対の生き方、実に自分に正直に生きていることに気づきます。かれらには、世の中でいう裏表などないのです。リュウには、ただ真摯に生きているふたりの姿が見えてきます。

 子どもの気持ちを理解しない親、真実から目をそらしてしまう世の大人たちが言う「ウソとホント」とはいったい何なのか考えさせられる1冊です。
ウソがいっぱい
ウソがいっぱい
丘修三/作
ささめやゆき/画
くもん出版
1,260円

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