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編集者のアンテナ

著者との出会いの前に

淡交社    滝井真智子
(2006年12月発行 会報第110号より)
  『演目別に見る能装束』という本を編集したときのことです。能を観たことはあっても、能衣裳にどういう種類があって、そのパーツを何とよぶかについては全く知りませんでした。まずその知識がなくては編集できないし、読者も理解しにくいでしょう。そこで、基本的な能衣裳の写真上に引き出し線をつけて、これが「摺箔」、これが「腰帯」等と書いて説明を付しました。そして、そのページを本の冒頭に置いたのです。その後、数寄屋建築の本を担当することになり、また建築部材の名前に暗い私は、同じように写真の中にパーツ名と解説を入れました。

 文字や解説は写真の該当部分の近くにあるととてもわかりやすい。単純なことですが、意外に採られていない手法だと思います。この手を1冊まるごと使ったらおもしろいんじゃない…。建築本のデザインをしてくれた写真家小林浩志氏につぶやくと、「それやろう」の一言。テーマを弊社の得意な「和」にしぼり、お互いに知りたい物事を出し合って、写真の収集と撮影にあたりました。

 この書籍のもう一つの魅力は、小林氏の事務所スタッフ堀江詠子さんの、硬軟自在のイラストだと思います。写真よりもイラストのほうが詳細を明快に語れる場合も多く、イラストにしたいページが予定外に増えていきました。しかし、そこは時間とのせめぎあい。シャッターを切るだけの写真に軍配が上がります。

 縁の下で支えてくれたのは、堀江さんのベターハーフでもある末吉陽一さん。写真とイラストを実画像データで取り込んで修正し、引き出し線をつけて名前を組み入れるという、実に手の掛かる仕事を黙々とこなしてくれました。著者以前に、この3人との出会いでできたのが『ニッポンの名前』。ちなみに題字も堀江さんのデザインです。

 その堀江女史は8月にママになりました。深夜残業を続けてくれていたあの時期に、新しい命の準備もできていたとは隅におけない2人です(笑)。
 ニッポンの名前 和の暮らしモノ図鑑
ニッポンの名前 和の暮らしモノ図鑑
服部幸応/監修
市田ひろみ/監修
山本成一郎/監修
淡交社
1,680円

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