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編集者のアンテナ

平和が生きるとき

かもがわ出版    三井 隆典
(2006年4月発行 会報第108号より)
   戦後の日本は、現憲法のもとで、1度も戦争に巻き込まれることなく復興をとげてきた。それは世界を見渡すと奇跡のようなことなのだが、日本国憲法と同世代の私は、それは空気のようなものであり、突っ込んで考える機会に恵まれなかった。

 ところが、ここにきてにわかに改憲論議が高まり、一方、これに心を痛める人々によって「9条の会」が発足した。不勉強だった私も、これに触発されて憲法を考えてみたいと思うようになり、「9条の会」の呼びかけ人をはじめ文化人といわれる人々の言い分に耳を傾けたいと考えるに至った。

 そこで、会の事務局長である小森陽一さん(東大教授)とご相談して、「憲法のいま」シリーズを立ち上げることにした。その第1冊目が本書であり、引き続いて2冊目、3冊目に取り組んできた。

 今日、「平和」とか「反戦」とかを口にすると、ジャーナリズムの世界でさえ拒否反応が示されるという風潮がある。こんな当たり前で普遍的なコンセプトを語ることが、なぜはばかられるようになってしまったのだろうか。そうした中で、この編集を通じて痛感したことは、原稿を寄せていただいた方々が、憲法の法律・政治論的解釈にとどまらず、それぞれの体験、思い、言葉で九条や平和を語っていることであった。

 国民投票法案が国会に提出されようといういま、私たち1人ひとりが、自らの経験や感性に引き付けてこの問題を考え、自らの言葉で語っていかなければならない時ではないだろうか。その作業が広く行われるようになった時、憲法は、とりわけ9条は国民1人ひとりの血肉となり、日本の真の指針になっていくのだと思う。そうしたことを感じながら、引き続きこのシリーズに取り組んでいきたいと考えている昨今である。
平和が生きるとき
平和が生きるとき
沢地久枝/〔ほか著〕 
小森陽一/編
かもがわ出版
1,260円

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