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編集者のアンテナ

高校数学と大学数学の狭間で

光村教育図書    鈴木 真紀
(2005年6月発行 会報第106号より)
 私は普段、大学生や研究者を対象にした数学の専門書を作っています。昔から高校数学と大学数学の間には大きな溝があったように思いますが、近年は「学習指導要領の改正」のせいもあって、大学での教育の現場が大混乱し危機的な状況に陥っていると感じていました。新入生の学んできた数学の範囲やレベルのバラツキが大きくなりすぎて、どこに標準を定めて授業をしたものやらといった按配なのです。

 細切れではなく、もっとトータルに高校数学を学び直すことができ、大学数学へのスムーズな橋渡しを可能にしてくれるようなタイプの本の出現が今ほど望まれているときはないと思って動いていたのですが、なかなか実現できずにいました。

 そのような折に、『虚数の情緒―中学生からの全方位独学法』の著者である吉田武先生から、本書の基となったものがウェブ上で公開されていることを教えていただいたのです。

 読んでみてびっくりしました。著者である宮腰先生は、大学で非常勤講師を勤められた後、予備校や塾で教鞭をとってこられた経歴の持ち主なのですが、それが生かされた、まさに高校数学と大学数学の架け橋となるとても魅力的なお原稿で、これだ!と思いました。

 高校での3年分を丁寧に扱うため、総頁が600頁にもなんなんとする分厚さ。だけど、高校生でもお小遣いで買えるような定価にしたい。その熱意の下に宮腰先生は本来は印刷所の仕事である組版作業までをご自身で引き受け、不眠不休で頑張ってくださいました。

 本書は、物語を読むように読み進めるうちにいつしか夢中になって考えていて、数学のちゃんとした理解・高みへと導かれているという、とても面白い本です。読者の皆さんがより広大で肥沃な数学の野に踏み出していくための足掛りになってくれればと願っています。
高校数学+α 基礎と論理の物語
高校数学+α 基礎と論理の物語
宮腰忠/著
共立出版
2,625円

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