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編集者のアンテナ

わたしの名字はどこからきたの?

アリス館    後路好章
2001年6月発行 会報第94号より
  うわっ、かわいい!
 十日市晃子さんに会ったときの第一印象である。晃子さんは、青森県八戸市の聖ウルスラ学院小学校六年生。この学校は『調べる学習コンクール』受賞の常連校。「総合的な学習」の優秀な実践校として注目されている。アリス館発行の『調べるっておもしろい!』シリーズの第一期5巻が幸運にも、第一回学校図書館出版賞をいただき、第二期にはぜひとも子どもが書いた作品を出したいと、この学校にアプローチしていたのだった。

 学校が推薦してくれたのが晃子さんである。小柄な子で四年生くらいに見えた。正直いって、(この子で大丈夫かしらん?)という不安がよぎった。担任の木村悦子先生に寄り添うように座っている。私は、おそるおそる聞いてみた。
 「お送りした、『調べるっておもしろい!』の本、どれか読んでくれました?」
 「はい、ぜんぶ読みました。とってもおもしろかったです。」
はじらいながらもきっぱりと応えてくれた。そして、いま、自分の名前のルーツを調べていること、少しずつだけれど、なぞがとけてきたこと、などを話してくれた。(この子なら、やってくれそうだ!)と確信したのは、それからふた月後、書き出しの十数枚を送ってくれたときだった。晃子さんの調べる姿のプロセスが、まるで映像を見るかのようにリアルに描かれている「調べるって、こんなにもおもしろいんだよ」という晃子さんの声が聞こえてくる! 晃子さんは、六年生の夏休みと冬休みをかけて、じつに四百字で百枚の原稿を仕上げたのだった。

 2002年度から正式に、「総合的な学習」がはじまる。教科学習の時間が減って基礎学力が低下するのではと懸念する声もある。はたして、そうだろうか。私は、「学力」とは「自ら学ぶ力」のことだと思う。「自ら課題を見つけ、それを解決していく力」のことだと思う。十日市晃子さんに出会い、いっしょに本を作る過程でそう再確認した。
わたしの名字はどこからきたの?
わたしの名字はどこからきたの?
十日市晃子/著
アリス館
1,365円

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