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編集者のアンテナ

誤読・誤用防止に役立つプロ仕様の日本語マニュアル

NHK出版    水野 哲哉
2014年12月発行 会報第14号より
「NHKには、アナウンサーのための虎の巻がある」という話を耳にしたことが、この企画が動き出すきっかけでした。早速、伝手を頼って実物を見せてもらうと、確かに読み方や使い方に自信の持てないうろ覚えの言葉が数多く収載されていました。
 市販されていないこの冊子は、実際の放送で間違えた言葉を集めたものでした。読み方や表現の間違いを視聴者に指摘された失敗の実例集ともいえるものなので、大っぴらには公開していないものだったのです。「言葉を扱うプロでもうっかり間違えてしまう用語集」。これは一般の人にも興味をもってもらえるのではと思いました。
 言葉は生き物であるというように、時代とともに言葉の使い方は変化していきます。現在は誤用とされているものでも、世の中の多くの人が使うようになれば、やがて使用が認められるようになります。そこでNHKでは、専門家や研究者も交えた放送用語委員会という場で、一語一語検討しているのです。例えば、放送で「大地震」を「おおじしん」と読むのか、「だいじしん」と読むのか、「一段落」は「いちだんらく」なのか「ひとだんらく」なのか、真剣に議論を重ねているのです。
 文字で表示することのできる新聞や本とは異なり、ラジオでは音声のみで意味・内容を伝えなければなりません。言葉の読み方や使い方を間違えたら、伝えたいことが伝わらないだけでなく、違った意味で伝わってしまうこともあるかもしれません。そのような間違いをひとつでも少なくするためにアナウンサーは日々訓練をし、細心の注意を払って放送の現場に臨んでいるのだそうです。テレビ画面ではなかなか見えてこない、アナウンサーの言葉に対する真摯なこだわりに接し、同じ日本語を仕事として扱う者として襟を正せと常に言われているような気がしました。
 「虎の巻」の中から一般の人にも関わりの深い言葉を選びだし、政治、経済、宗教、歴史、気象などのカテゴリーにわけて編集し直したのが本書なのです。

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