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編集者のアンテナ

多摩川の匂いがします、きっと

旬報社    熊谷 満
(2013年9月発行 会報第10号より)
山崎さんの仕事場を初めて訪れたとき、入り口にはいくつもの水槽が。それは何段にも重ねられ、通路をふさいでいました。身体を横にしながらなんとか間を通っていきましたが、目に映る魚はどれも珍しいものばかり(私が魚の知識がほぼゼロ、ということもあるのかもしれません。なにせ、唯一見てわかったのがウーパールーパーですから)。
 この魚どうしたんですか、というのはもちろん愚問。すべておさかなポストに捨てられた魚たち。山崎さんのもとで里親を待っているのです。
 本の制作中はなんども仕事場におじゃましました。お話をうかがっていると、ひっきりなしに山崎さんの胸ポケットの携帯が鳴ります。「はいはい?」と山崎さん。たいてい魚をひきとってほしいという相談でした。「ええと、ではですね」と、おさかなポストの場所、行き方、受け入れ体制などをていねいに説明します。1日に10本以上もこうした相談の電話がかかってくるそうで、おさかなポストの盛況ぶり(?)に驚くとともに、文字どおり身銭を切り、どんなに疲れていても懇切ていねいに応対する山崎さんの情熱の源泉ってなんなんだろう? そんなことも思わずにはいられませんでした。
 多摩川は私自身も日々目にしている身近な川でしたが、その実態に驚かされました。編集者として山崎さんの気持ちに一歩でも近づこうと、川のイベントや投網打ちに同行したりと、多摩川の水にどっぷりとひたって完成したのが本書。もしかしたらページから多摩川の匂いがするかもしれません。
 「文字はずっと先まで残る。本は文化なんです」。ことあるごとにそうおっしゃっていた山崎さん。今年、本書が産経児童出版文化賞をもらったことを伝えると、「うひゃあ!」。破顔一笑、「子どもたちに長く読んでもらえる本になればいいな」。山崎さん、一緒によいお仕事をさせていただき、ほんとうにありがとうございました。

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