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編集者のアンテナ

くさくて汚くてすばらしいカビ

汐文社    仙波 敦子
2013年9月発行 会報第10号より
古典文学、ノベライズ、翻訳作品、時事問題、料理に手芸、工作…毎年さまざまなテーマで本を作りますが、実は理科分野の本はほとんど作った事がありません。さて今回のカビ、どう進めようかと詳しい知人に相談すると、丁度カビの本を作りたい人がいるとラッキーにも引き合わせていただいたのが著者の伊沢尚子さんとの出会いでした。
 特に話し合いを重ねたのは本のデザインについて。カビの生態そのものが持つ面白さを引き出し、汚いと敬遠されないようにしたいという伊沢さんの思いに沿って、理科が苦手な女の子にも手に取ってもらえるように柔らかく、なおかつ生き物好きのマニアックな男の子も満足するようなかっこいい本を目指しました。
 例えば『調べよう』の冒頭ページ。カビを生やすイチゴのパック写真がメインですが、カビの一生を追う壮大な物語の始まりでもあります。写真だけではなく絵も交えて物語性を出したかったのですが、写真と絵の組み合わせは中々ぴったりはまらず、少し間違うと古めかしくチグハグな雰囲気に…。伊沢さん、デザイナーの稲垣さん、イラストレーターの杉山さんと何度も話し合って、背景には細部まで描き込んだ果物売り場の絵を置き、その絵の調子を少し落とす事で決着しました。
 カビに夢中になりすぎたのか、伊沢さんとの打ち合わせでは時に4・5時間も話し続け、話し終わるとお互い椅子から立ち上がるのもやっと、という日もありました。監修をお願いした細矢先生の研究室を訪ねた時も初対面ながら話が尽きず、遂には細矢先生がその後予定されていた学会会場へ移動される道中にまで同席して、三人でカビについて話し続けた事もありました。
 それもこれも、カビの魅力ゆえでしょう。目には見えない存在ながら、いなくなったら地球は大変。くさい汚いと嫌がらず、「カビって面白い」、そして「身近にふしぎな事はいっぱいある」という制作陣の思いが、子ども達に伝わる事を願っています。

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