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編集者のアンテナ

生命豊かな干潟の世界

星の環会    栗山 佑子
(2012年9月発行 会報第7号より)
 海の授業をしている人に出会い「水鳥たちのウエットランド食堂」という外国版の絵本を自ら手製の翻訳で子どもたちに聴かせていました。日本の干潟の絵本があればもっとよくわかり楽しいでしょうね、ということから絵本談義が始まりました。動物学者に参加いただいて絵本の会合を持ち、干潟をテーマに「みんな違ってそれがいい」「情操教育と生物多様性の重要性に発展させる」ということで意気投合して絵本つくりをスタートしました。
 「日本の春の日の干潟で鳥たちのおしゃべりを聞いてみましょう」「干潟は海の生きものと陸の生きものの両方がすむ、地球上でもっとも生命豊かな場所なのだ」「干潟は小さな生きものがすむ単なる海辺の一角というのではなく、干潟もまた生きていて、潮の満ち引きという宇宙の大きな力で生態系が成り立っているのだ」だんだん干潟を知ることになりました。絵を担当した日本画家の小島さんは干潟を見に行くといって、東京、千葉、神奈川の干潟を検索すると閉鎖していたり、近代化の影響で縮小されていたり、ちょっぴり憂いながらも、潮が引くと干潟が現れる現象を目の当たりにして魅せられました。まずは絵本のヒロインの表紙絵はどの鳥さんに? みんな自慢のくちばしで、私よ、ぼくよ、といっているようです。画家が描いてきたのは、先がしゃもじのようなりっぱなくちばしでエビを5匹くわえて得意げな顔をしているヘラサギでした。かわいくて、すごいぞ!と異口同音の直後にストップ! ヘラサギが一度に5匹もエビをくわえることはありえない。1匹が普通です。編集者は食い下がり、普通でないときもありますか?ごくまれにあっても2匹かな。表紙だし大目にみましょう、では、エビは2匹に描きなおし。本文におきましても読者である子どもたちの好感度を得るために、かわいい、おもしろい、きれいを優先するあまり行き過ぎたときは、監修者がストップをかけます。この絵本の重要な部分なのです。
書影
干潟のくちばし自慢

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