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編集者のアンテナ

「平和を作る」絵本

童心社    永牟田 律子
(2012年4月発行 会報第6号より)
「中国、韓国、日本の絵本作家が連帯し、平和のための絵本を作れないだろうか」。
 二〇〇七年十一月、三か国十二人の絵本作家たちが、中国・南京に集った。田島征三、田畑精一、浜田桂子、和歌山静子という日本の絵本作家が各国の作家たちに呼びかけてから二年後のことだった。
 編集として会議に参加することになった私は、まず「平和絵本」という言葉と向き合わなければならなかった。今、子どもたちと平和について考えるとき、どうしてもその対極にある戦争を伝える必要がある。戦争を描かなければ平和が見えてこないというジレンマ。しかも、私自身は戦争を体験したことがない。体験した人でも、他国の人が体験した戦争は知らない。では、国境を超えて平和絵本を作るとは、一体どういう作業になるか。
 十二人の絵本作家たちがしたことは、互いにじっと耳を傾け、相手が抱えるものを知ろうとすること。そして、自分のことを精一杯相手に伝えることだった。それは国や文化の違いを超え、歴史の本質を見ようとすることであり、未来を見つめる過程でもある。
 南京で「日・中・韓 平和絵本」の中身について議論が始まり、いくつも会合が開かれ、千通を超えるメールが三か国を飛び交い、気の遠くなるようなやりとりを重ねた。こうしたやりとりこそが平和を作る作業なのだと私は知った。戦争や暴力によらない問題の解決方法がそこにひそんでいて、その中から出てくる。
 第一期に出版された3冊をはじめ、このシリーズのすべての絵本は、日本語、中国語、韓国語で出版される。日・中・韓の作家たちが本気でぶつかり合い、互いに耳をすましながら作った絵本から、子どもたちは何を受け取るか、本当の平和作りはこれから始まろうとしている。このシリーズは、いつか戦争を描かずに平和が描けると、その可能性をひめていると思う。
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