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編集者のアンテナ

将来の博士たちへのメッセージ

東海大学出版会    田志口 克己
(2010年11月発行 会報第2号より)
 熱帯アジアという言葉から、何を思いうかべるでしょうか? 鬱蒼とした森、マングローブの林に洞窟といった大自然でしょうか?それともたわわに実ったバナナにマンゴー、ドリアンなどの魅惑のフルーツ?それとも瑠璃色に輝く羽をもったチョウなどの貴重な生き物たちでしょうか?
 この本(『熱帯アジア動物記』)では熱帯アジアの森の主役の1つといえるゾウにサイ、オランウータンにシカなどの野生の動物たちにスポットをあて、一年のほぼ半分以上をマレーシアの熱帯雨林ですごし、広大な森を駆けめぐる研究者の情熱をまとめたものです。
 知られざる動物たちのことはもちろん、研究者をこころざす動機から、フィールドに出るまでの取り組み、実際にフィールドに出てからの苦労や、現地の人々との出会いや交流などの話題がふんだんに描かれています。
 なおこの本は“フィールドの生物学”という若手の研究者による実際に経験したものでしか知り得ない、感動、苦悩、驚きなどを自身のエピソードをふまえながら紹介していくシリーズの創刊号で、他にも同じ熱帯雨林の森でサイの角のようなちょっと変わった嘴をもち種子散布者(果実を食べて、そのタネをまく)として森を育てる役割を果たしている鳥「サイチョウ」の話。熱帯の森で数年に一度という不規則な間隔でおこる一斉開花という不思議な現象を、ハムシという小さな昆虫をとおし解明する女性研究者の挑戦の話。子どもから大人まで誰もが知っている動物でありながら、地中で生活するがゆえにその生態は謎につつまれたモグラを解き明かすべく、世界中のモグラを追い求める研究者の軌跡などのタイトルがあります。
 この本を読んでくれた研究者の卵である子どもたちが、この本に登場する先輩たちの姿に憧れ、後を追いかけ研究者となってフィールドに出ていく、そんな場景を思い描きながら誕まれた一冊です。

熱帯アジア動物記

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