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編集者のアンテナ

宇宙人さがしは自分を問いなおすこと

旬報社    田辺直正
(2010年4月発行 会報第120号より)
 宇宙人はいるか。きっとだれもがそうした問いを一度は考えたことがあるのではないでしょうか。とはいえ、宇宙人というとテレビや雑誌などでよくある、UFOなどの目撃談を思い出し、どうも胡散臭さがただよいます。

 宇宙人、つまり地球外の知的生命体さがしが科学研究としてちゃんと存在し、SETI(セチ)とよばれていることを知ったのは、つい最近でした。しかも日本でそうした研究を続けている人がいることを知り、なんとしても会って、話を聞きてみたくなりました。

 兵庫県の佐用郡に、一般にも公開されている、県立の天文台(西はりま天文台公園)があります。そこにはなゆたという日本国内で最大の光学望遠鏡がありま す。このなゆたをつかって宇宙人=知的生命体の存在を科学的に探査しつづけている人が天文台の主任研究員で著者の鳴沢真也さんでした。鳴沢さんは日々、こ のなゆたをつかって宇宙から発せられるという電波やレーザーをキャッチして地球外の知的生命体の存在を追いかけています。その研究のとりくみとSETIの あゆみをまとめたのが『望遠鏡でさがす宇宙人』です。

 なぜ、鳴沢さんはSETIをしているのでしょうか。聞くと海の形成、生命の誕生、そして知性への進化がほかの惑星でも再現されるのかという疑問であり、つまりは自分はこの宇宙で特別な存在なのかという問いだといいます。

 鳴沢さんによるといま人類が観測できる範囲にある星の数は、世界中の海岸に存在する砂粒の数より遥かに多いそうです。そのなかに地球にそっくりな惑星はたしかにあっても不思議なことではなさそうです。

 そうだとすると将来、もし発見されたときのことを考えると、私たちは私たちを自信もってその相手に紹介できるでしょうか。環境破壊や繰り返されるテロや戦争など地球上で起きていることを思うと襟を正す必要がありそうです。

 翻って宇宙人をさがすことは宇宙の片隅の小さい地球にいる私たち自身を問い返すことにもなりそうです。この壮大な「自分さがし」に読者のみなさんが少しでも興味をもっていただければと願っています。
望遠鏡でさがす宇宙人
望遠鏡でさがす宇宙人
鳴沢真也 著
旬報社
1,575円

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