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編集者のアンテナ

初めての科学絵本体験はロマンチックな紆余曲折

あかね書房    木内麻紀子
(2009年12月発行 会報第119号より)
 「海の絵本を」と最初に思ったのは、約三年前。営業との会議で「子どもが体験できる磯辺遊びの本っていいね」という意見が出たことがきっかけでした。調べると、ある教科書の二年生国語では「熱帯の海」についても学んでいます。これは、面白い題材なのでは!

 最初の難関は、専門家選び。児童書に限定せず、語り口の豊かな文章を探しました。そこで気になったのが、柔らかい口語を使う鈴木克美さん。お会いして納得したのは、鈴木さんは水族館の勤務が長く、子どもに向けた海の説明のプロであられたこと。会話も発想もユニークで、魚の知識がまったくない私にとって、打ち合わせは毎回が楽しい授業のようでした。

 しかし、根本的な問題にぶつかります。当初依頼する予定だった「磯辺」や「熱帯」などのテーマ以前に、海のロマンに入れ込みすぎた私は、鈴木さんが専門的に研究されていた「ハリセンボン」の話の豊かさにハマってしまったのです。予定調和にならないのが企画の怖さ、はたまた面白さですが、最終的には会社を説得する形で、まずはハリセンボンの絵本を出すことになりました。児童書編集に携わって十余年、こういう自我を通す機会はめったにないので、内容の確かさに確信はあっても、実はたいへんドキドキしました。

 最後まで検討を重ねたのは、ビジュアルです。図鑑的な細密画? リアルさと迫力の写真? でも、良書の多い科学絵本ジャンルで新しさを出すには…。結局、創作絵本のような大らかなタッチの絵にしたい!と考え至り、生きものを愛嬌たっぷりに描くことのできる、絵本作家の石井聖岳さんにお願いすることに。実にかわいく仕上げてくださり、ここでの出合いへも強く手応えを感じました。

 …後日談ではありますが、ハリセンボンの魅力を伝え終え、もちろん当初の課題にも戻ったんですよ。シリーズ二巻目は熱帯を扱った『カクレクマノミは大きいほうがお母さん』。鋭意編集中です。こちらも、どうぞご期待ください!
ハリセンボンがふくらんだ
ハリセンボンがふくらんだ
鈴木克美/作 石井聖岳/絵
あかね書房
1,470円

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