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編集者のアンテナ

その昔、恐竜たちは大空を飛翔したいと願ったのか

ソフトバンク クリエイティブ    中右文徳
(2009年4月発行 会報第117号より)
 フライドチキンっておいしいですよね。

  でも、骨があるので食べにくい……。やわらかいのは、そのまま食べちゃう!

  ハハハ、じゃあ、何ピースあったらニワトリ一羽が復元できるでしょう?

  (えっ、復元できるんだ……)

  この本は、学校の先生でありながら、骨研究のおもしろさにはまり、とうとう日本全国で「骨の学校」まで始めてしまった著者のゲッチョこと盛口満さんが、恐竜は鳥類の先祖であるという最新の進化学説に疑問を感じ、周囲の人たちを巻き込みながら、体あたりで確かめてみた記録です。

  骨と鳥と恐竜に、どんな関係があるのでしょう? ご存知のとおり、恐竜は骨しか残っていません。ところが、その動物の「れきし」と「くらし」(進化の系譜と適応の生態)は、骨にシッカリ刻まれているのです。そして、恐竜と鳥類の骨を比べてみると、驚くほど特徴が似ていたということです。

  そうはいっても、恐竜のイメージと鳥のそれとでは、あまりにも違いすぎます。盛口さんが教え子たちに鳥の頭の骨を見せても、誰も恐竜だとはいいません。恐竜と鳥類が仮につながっていたとしても、その間には大きな進化の溝があるように思えます。

  ただし、鳥類とはいっても、その種類は多く、くらしに合わせていろいろな特徴をもつものが多いことも事実です。盛口さんは、ダチョウの骨格標本をつくる機会から、こうした飛べない大型の鳥たちを次々に解体していき、鳥の系譜にたどり着きます。すると、鳥類は動物の進化の初期に分岐した種族であり、いま私たち人間が獲得してきたさまざまな特徴が、生物界では異端だということがわかってきます。

  本書によって、動物の進化とはなにか、私たちはなにものか、といった究極的なテーマを、実に身近な話題から具体的に考える機会が生まれると思います。そして、フィールドワークを通して、五感で、自分の頭で考える教育の大切さにも気づいていただけると思います。
フライドチキンの恐竜学
フライドチキンの恐竜学
盛口満/著
ソフトバンククリエイティブ
1,000円

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