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編集者のアンテナ

聴導犬について知ってください

金の星社    池田 真純
(2008年12月発行 会報第116号より)
 編集者になって一年目。まだまだ駆け出しの私が、初めてひとりで担当したのが、この本です。著者の高橋うららさんも、これまでは創作を書かれていて、ノンフィクションは初めてとのこと。初めて同士、手探りでの本作りになりました。

  耳の不自由な人に、生活に必要な音を伝える聴導犬。本書は、聴導犬候補となって訓練を受ける子犬たちと、聴導犬を育てる活動をしている人たちを追ったドキュメントです。

  はじめにいただいた原稿は、プロローグとして聴導犬についての簡単な解説があり、その後この本の主人公である、聴導犬候補になった犬のハナが、子犬の時に捨てられていた場面へと続いていました。そこで、このハナの場面から物語風にはじまった方が、読者は入っていきやすいのではないかと、提案をいたしました。聴導犬の説明については後で出てくるので、重複する部分もあったからです。

  ところが、高橋さんのご意見としては、この本はハナや聴導犬を育てる活動をしている人たちの話を中心としながらも、それを通して、聴導犬の役割や育成方法、また、耳の不自由な人たちが抱えている苦労について説明することが目的であるので、ハナの物語だと思って読者が読みはじめると、違和感を感じるのではないかというのです。

  確かに、ハナや育成団体の方たちの話にばかり目がいって、作者が一番伝えたかったこと―聴導犬について知ってほしい、耳の不自由な人に対する理解をもっと深めてほしい、ということを私は読みとれていませんでした。それからは、常にそのことを意識するよう、心がけました。

  聴導犬は日本では歴史が浅く、現在認定されている聴導犬は十数頭しかいません。聴導犬になるための訓練に励む犬たちの様子、聴導犬を育てている人たちの、聴導犬育成に対する情熱を通して、読者が聴導犬について少しでも興味を持ってくれればと願っています。
犬たちがくれた音
犬たちがくれた音
高橋うらら/著
MAYUMI/写真
金の星社
1,365円

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