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編集者のアンテナ

クオリティの高い韓国絵本

平凡社編集部元勤務    浅井 四葉
(2004年6月発行 会報第103号より)
  喃語から始まって数ヶ月、「ワンワン」、「ブーブー」と視界にとらえたものを子どもが懸命にこちらへ伝えようとする時期、親たちにとっても楽しいのが、絵本を一緒に読む時間だ。毎日毎日飛躍的に言葉の数が増えていく驚き。ページの端っこに小さく描かれた、大人だったら見逃してしまうようなものを教えてくれる驚き。こちらがうまくリズムに乗って読めば、子どもは全身を心地よさそうに揺らす。成長ってすごいな、言葉っておもしろいな、と妙に感心し、日頃の育児の大変さもどこかへ吹っ飛んでしまうだろう。

 『だれかな、だれだろ』は平凡社の韓国絵本シリーズの中で、もっとも低年齢児を対象にした絵本。にわとりとひよこ、犬、牛など動物親子が見開きごとに登場し、鳴き声と、草の茂みや石の陰にちらりと見える姿から、次に登場する動物を言い当てる仕掛けだ。動物、食べ物、家の中にあるものなど、名前あては低年齢児向け絵本の王道である。

 編集にあたっては、つねに繰り返されるフレーズ「あれ? だれかな、だれだろ?」にどこまでバリエーションをもたせるかが課題となった。繰り返しは大切だが、すべて同じだと単調だね、いや読み手が好きなリズムで読めるような言葉遊びのヒントを載せよう……と、結局、語尾をアレンジしたフレーズを小さく載せた。訳者である小倉夏香さんは、愛情に満ちた、動きのある言葉を出してくださった。

 児童向けとしてはこれまで図鑑や学習書が中心だった韓国。作家や出版社の意識が変わり、よりクオリティの高い作品が発表されるようになったのはここ数年だ。今年のボローニャ国際児童図書展に参加した知人編集者も、韓国のブースは勢いがあり、どこよりも際立っていたと話していた。『だれかな、だれだろ』は、そういった流れの中では図鑑と創作絵本の中間に位置する作品。懐かしさを日本の読者に感じてもらいたい。
だれかな、だれだろ
だれかな、だれだろ
シムチョウォン/文
クォンヒョクト/絵
小倉夏香/訳
平凡社
1,575円

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