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編集者のアンテナ

平和を祈る被爆ピアノの音色をとどけたい

文研出版    浜田三喜子
(2008年9月発行 会報第115号より)
 作者の指田和子さんから、「爆心地近くで被爆したピアノがあり、そのピアノを使ってコンサートが開かれています。被爆者の方たちが高齢になっていく中、別な形でヒロシマを伝える使命を負ったのが、このピアノであるように思えてなりません。現在、このピアノを所有しているのは調律師の矢川さんで、ピアノをトラックに載せて全国をコンサートに回っています。何度か同行して、ピアノのことを絵本にしたいと思っているのですが」というご相談を受けたのが、二〇〇六年の春でした。

  出版の方向で進めることが決まり、絵を坪谷令子さんにお願いし、八月六日、市内の小学校と平和記念公園で開かれた二つのコンサートを取材しました。被爆ピアノの音色は元気で力強く、心がうるおされると同時に、「被爆したピアノが今、音を奏でている」という驚きを感じました。

  矢川さんの「父親から繰り返し被爆体験を聞かされました。音楽は世界共通言語。平和コンサートは私が次の世代のために無理なくできることです」という思いをうかがい、ぜひこのピアノの存在を子どもたちに知ってほしい、このピアノがどんな時間を過ごして、今ここにあるのかを伝えたい、というのが、作者・画家・編集者三人の共通した思いでした。

  それから何度も原稿が行き交い、ときには迷路に入り込むことも……。製版校正になるぎりぎりまで推敲が続きました。また、絵のほうも校正を繰り返し、ピアノの色やキョウチクトウの色など坪谷さんが印刷所に行って微妙な点の指示を伝えるということもありました。絵本の読者にピアノの音色も聞いてもらいたいということで、被爆ピアノのために作られた曲を録音したCDをつけました。

  そうして二〇〇七年七月にできた絵本のお披露目を広島赤十字・原爆病院と矢川ピアノ工房で「記念コンサート」としてできたことは、とてもうれしいことでした。多くの方の力を借りて誕生し、育てられている絵本です。
ヒロシマのピアノ
ヒロシマのピアノ
指田和子/文
坪谷令子/絵
文研出版
1,680円

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