1. HOME > 
  2. 編集者のアンテナ

編集者のアンテナ

日本の「ムーミン谷」シリーズを

理論社    岸井美恵子
(2008年4月発行 会報第114号より)
  “この森でもなければ その森でもない
    あの森でもなければ どの森でもない”

  どこかにありそうな、不思議な「こそあどの森」のシリーズは、そもそも十五年近く前、トーベ・ヤンソンの「ムーミン谷」シリーズのような魅力的なシリーズを日本でも作りたいとの思いからスタートしました。

  作者の岡田淳さんは、それまで学校を舞台にしたファンタジー作品を書かれて子ども達の人気を集めていました。お話のプロットが次々と湧き出るような生来の物語作家です。

  その岡田さんにそれまでと違うアプローチで、ストーリーより先に物語の舞台となる世界と登場人物を考えていただくと、絵もお好きということもあって、人物とその住まいがユニークなイメージ画として出てきたのです。

  ずんぐりした船にとげとげのウニをのせたような家に住む少年スキッパー、半分地面にうめたやかんの家に住むポットさんトマトさん夫婦、木の上の屋根裏部屋に住む作家のトワイエさん、楽しいことが大好きなふたごの家は巻貝の形、真ん中のらせん階段と踊り場しかありません。そして、これらの家は森の中に点在しています。この「こそあどの森」は、町に住む私たちが失ってきた懐かしい世界、まだどこかに存在していてほしい世界なのです。

  土台となる舞台がしっかり構想された上で初めてストーリー作りが始まりました。書くのはもちろん作者の岡田さんですが、森の住人たちがお話を牽引しているふしもあるようです。 

  スタート以来こうして生まれた物語が九作、何巻が面白いという好みも読者それぞれのようです。最新作「あかりの木の魔法」は、湖に恐竜を探しに来た学者イツカにスキッパーが心酔し……幻想的光景が印象深い作品です。

  昨年、図工の先生を退職された岡田さん、『こそあどの森の物語』はますます快調に作者のライフワークとして巻を重ねることになるでしょう。十、十一、十二巻目も構想中、森には物語の泉が湧き出しているようです。
あかりの木の魔法
あかりの木の魔法
岡田淳/作
理論社
1,575円

バックナンバー

選書リストを見る

新規登録すると…

SLBAに参加登録(無料)していただくと、ホームページからもご注文が可能になります。

学校図書館様向け 新規登録

書店様向け 新規登録

ページトップへ

当ホームページ掲載の記事、写真、イラスト等の無断掲載を禁じます。