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エッセー&小論

3.11絵本プロジェクトいわて

絵本編集者
末森 千枝子
(2012年12月発行 会報第8号より)
私は8月23日から26日までロンドンで開かれたIBBY(国際児童図書評議会)の第33回世界大会に出席し、「3.11絵本プロジェクトいわて」についての報告をしてきました。それに先立ち、JBBYの村山会長が今回の震災の全体を俯瞰した報告をして下さいました。
 私は震災の一年近く前に、自分の出版社を整理し、東京を引き払って父の郷里である岩手に引越していました。広い岩手県でも内陸の正面に岩手山を見るところで、ゆったりと暮らすつもりでした。ところが、あの震災です。地元に住む私たちは、数日停電しておりましたので、あのすごい津波のことを知るのは、世界中の人たちのほうが先でした。長い間、子どもの本に関わり、しかも、IBBYに関わって、世界中でたくさんの仲間が子どもたちに本を届けるために働いている様子を見てきた者として、黙っているわけにはいきませんでした。全てを失った子どもたちに、せめて絵本を届けたい、という思いでした。父から聞かされた明治29年の三陸大津波のことも思われました。すぐに、友人たちに、「絵本を送って下さい」というメールを出したのです。それが、自然発生的にこのプロジェクトになりました。
 たくさんのメディアが取り上げてくれたこともあり、2ヶ月で23万冊もの絵本が届きました。日本中の人がこのような時に、これほど絵本に信頼を置いていたのか、と今さらのように思いました。届いた絵本を仕分けするボランティアの働きも素晴らしいものです。それぞれが、このことを通して、働けることを幸せに思って集まってきました。大切にしていた絵本を送ってくれる親子もたくさんいました。私たちは、このプロジェクトを10年は続けようと思っています。
 被災地の子どもたちは健気でした。絵本を届けにいった時に、津波に流される前に持っていたお気に入りの絵本を必死に探す男の子がいました。あの子は、私の中で、まるで忘れられない存在になりました。
 ロンドンで話す時に、私はNHKが提供してくれた英文テロップ付きの『花は咲く』を画面に流しました。ここに、子どもたちのために何かをしようとすることの意味が、ハッキリと歌われている、これは世界中の人たちにも共通だと思ったからです。会場の人たちは、泣きながら、一緒に歌っていました。

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絵本編集者    末森 千枝子

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