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著者からのメッセージ

多重の生を生きて

   神沢利子
(2007年12月発行 会報第113号より)
 サハリンの小さな山里で育ったこどもの頃、わたしの一番のたのしみは野山をかけてあそぶこと。

 そしてそれと同じほど、買って貰ったザラ紙のお帳面(ノート)に、お話をかくことでした。お話はそれこそ雲の湧くように湧いてきましたし、それにさし絵をつけることもまた、たのしみのひとつでありました。

 サハリンを遠く離れた東京で成人し、いつか童話作家とよばれるようになった現在も、わたしは原稿をかきながら、「あの頃と全く同じことをしているなあ」と思います。まことに「雀百まで踊りを忘れず」です。さて、踊りの手ぶりは少しは上達したのかどうか?

 でも、同じうたをうたい続けてこれたのは幸せなことに違いありません。

 童話という宇宙の中で、わたしは熊やトナカイになり野山を駆けることもできました。アザラシやラッコとなり海も泳ぎました。また、一転して天へかけ昇り、天の雪原に橇を走らせることだってできたのですから。

 この世に人とうまれながら、同時に多重の生を生きられるこの仕事は、まことにわたしをゆたかにさせてくれる恵みとでもいいましょうか。ありがたいことに思います。
本イメージ
同じうたをうたい続けて
晶文社刊
1,995円
中学校・高等学校 

著者
神沢利子

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