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著者からのメッセージ

若き母に託した願い

   上條さなえ
(2007年9月発行 会報第112号より)
 以前、私はこの作品と同じ出版社である文溪堂さんから「お菓子の街をつくった男」という子ども向けの児童書を書かせてもらっていた。モデルは北海道帯広市に本社を置く六花亭株式会社会長だった小田豊四郎氏で、私は企業道徳についても人間の在り方についてもたくさんのことを学ばせていただいた。

 そのこともあって、六花亭さんの工場で働くパートさんをいつか書きたいと思っていた。子どもにとっても、大人にとっても、お菓子は憧れの商品である。ショーウィンドーに並ぶお菓子は、宝石と同じように美しかった。

 母のモデルは私の姉で、主人公は幼い日の私である。現実はもっと厳しかったが、祖母が生活保護を受けているのは我が父と同じ設定にした。その悲しさ、惨めさは、経験した者でないとわからない。ヤンキーという言葉は好きではないが、今は人生の歩き方を一足まちがうと中々、元には戻れない、そんな若い母が立ち直る姿を書きたかった。貧しさの中で強く生きろなんていいたくはなかった。でも、祖母と子どもへの愛だけは捨てさせてはならないと思ったのだ。私の姉が、一度も私を捨てなかったように……。
本イメージ
わたしとママのチョコレート物語
文溪堂刊
定価1,365円
小学校低・中学年

著者
上條さなえ

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