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著者からのメッセージ

鳥かごのような街だった

   長野まゆみ
(2006年12月発行 会報第110号より)
 東京のおもだった通りを都電が行き交いした時代があった。街じゅうに架線が張りめぐらされ、それが集中する交差点などでは、鳥かごのなかにいるような気分だった。ポイントの切り換え地点では、架線とパンタグラフの接触でしばしば青い火花が飛び散るのを目撃した。

 自動車優先の時代に都電の路線は次々に廃止となる。線路の撤去には費用と時間がかかるため、敷石もレールもそっくりアスファルトで埋めてしまったところが多い。そのレールがときおり地表に顔をだす。上野でも銀座でも、アスファルトのひび割れは、レールのかたちになっている。歩道橋の上からながめてみてほしい。運がよければ発見できるはずだ。

 シナガハやウヘノを旅する少年たちのように、日付変更線を踏み超えることはかなわなくても、昔の地図をひろげて歩けば、東京の街角にかつてあった風景に一歩近づくくらいはできる。私は、そんな散歩が好きだ。
本イメージ
時の旅人
河出書房新社
定価1,050円
中学校

著者
長野まゆみ

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