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著者からのメッセージ

彼女の見る光とともに

   山本 敏晴
(2005年6月発行 会報第106号より)
 その国から離れた今も、看護師セーラの言葉は変わらず私の胸に響いている。「あたしね…赤ちゃんが産まれてきた時それをお母さんに初めて見せる瞬間が好きなの。お母さんになった女性はね、本当に優しい微笑をするのよ。不思議な表情なの。生まれてきた子の遠い未来の姿が見えているような…。そんなお母さんの瞳が見たいから、私、戦争が続いている今も、まだここで働いているのかもしれないわ」

 かつて小学生の時、父に連れられ発展途上国を訪れて以来、私の国際協力への挑戦が始まった。一見貧しく困っている人々のために出かけていく人々の姿やその活動は美しく善意に満ちているように考えられがちだ。しかし実際の国際協力の現場は全く異なっている。その世界は偽善と利権、そして何よりそれぞれの人間の自己満足が支配する非常に汚い世界だった。

 何度もやめようと思った。こんな汚い世界ならば、と。しかしそんな時、このアフガニスタンに住む彼女の言葉が私を支えてくれる。腐った世界の中に刺す一筋の光明のように導いてくれる彼女の眼差しに従い、私は今も世界を飛び回っている。遠い未来の姿を見せてくれそうな世界中の子供たちとともに。
本イメージ
「アフガニスタンに住む彼女からあなたへ」
白水社刊 定価1470円
高等学校

著者
山本 敏晴

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