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著者からのメッセージ

河の流れのように

   遠藤 順子
(2010年11月発行 会報第2号より)
 夫、遠藤周作は若い頃から蒲柳の質であったようで、せっかく、選ばれて戦後初のフランス留学生になったものの、当初五年間のはずだった留学をフランス人の医師の忠告で三年に短縮して帰国したほど、身体の弱い人でした。そのことは百も承知のうえで結婚したつもりでしたが、四十一年間の結婚生活の中で、主人はなんと十回入院、八回手術という人でしたから、こちらも大抵のことではいちいち動じてはいられないと覚悟をきめ、事実、どうにもならない生活が長く続きました。主人は自分が病弱だったせいで、自分より年上の方々についての心配りは並大抵のものではなく「今のお年寄りは気の毒だよねえ。戦争で軍隊に引っ張られて散々辛い目に遭わされた挙げ句、空襲で家まで焼かれたり、生きて行く根拠を失った人もたくさんいるんだ。せめて老後は、安心して、心優しい看護を受けて、人生を全うしてもらいたいものだ」というのが口ぐせでした。こうした思いから一九八二年には「心暖かな医療」運動をはじめました。主人が遺していった文学以外の仕事に添って、私に少しでも手伝えることがあればと、携わった生命尊重センターの胎児を守る円ブリオ基金のこと、あとは日常のなんでもないこと、感じたり、体験したこと、身内のこと、今とは価値観のまったく変わってしまった子供時代の思い出などを一度まとめておきたいと思っていて、この、自分史のようなものができあがりました。気恥ずかしいのですが……。
大工道具を描く
河の流れのように
女子パウロ会刊 1,260円
高等学校

安田 泰幸
遠藤 順子

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