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編集者のアンテナ

ノーベル賞作家のファンタジーノベル

中央公論新社    山本 啓子
(2004年11月発行 会報第104号より)
   本書は3人の少年・少女たちがタイムマシンにのって様々な「時間」と「場所」を行き来するファンタジーです。2003年のお正月から10月まで、毎土曜日「読売新聞」朝刊に連載されました。著者の大江健三郎氏が子どもの読者を想定して表現をみがき、かつてなく楽しみに準備されてきたという本作品は、私たちが暮らしている日本という国、この国の現在にとけこんでいる過去、これから来るべき未来への思い、そしてこの本をしっかりと受けとめてくれるであろうすばらしい読者――「新しい人」たちに対して抱く希望のメッセージに満ちあふれています。

 読者として少年少女を念頭においていたので、装幀はできるだけ手軽に持ち運べるよう、軽い、それでいてしっかりしたつくりのものを、大江氏の思い浮かべるイメージをとりこみながらつくっていきました。

 また、新聞連載を単行本にまとめるにあたって、連載時に新聞紙面を(ときにカラーで)飾っていた彫刻家の舟越桂氏が描いたすばらしい挿画の数々をどういかすかがポイントになりました。最終的には、単行本のための小さな描き下ろしカットもたくさん加わり、相当数の挿画を収載することができたので、小振りな本ですが、たいそうぜいたくなつくりとなりました。

 刊行されてから、そろそろ1年になりますが、いまでも読者からのお便りが数多くよせられています。過去に大江作品を読んだことのある人にとっては、おなじみの登場人物がでてきてうれしい仕掛けになっています。また、これからはじめて大江作品にふれる多くの子どもの読者にとっては、またとない入門編といえる作品です。

 読書のすばらしさは、面白おかしいエンターテインメントとの出会いばかりとはかぎりません。この本を手はじめに、読み、深く考える作品があることを、そしてこの出会いを壮大に広がる読書体験への入り口としていただきたいと切に願います。
二百年の子供
二百年の子供
大江健三郎/著
中央公論新社
1,470円

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