文明の歴史とは「人類 VS 細菌・ウイルス」の戦いの歴史と言ってもよいかもしれません(あの太古の恐竜もウイルスによって絶滅したという説があるとか)。この戦いは、時に歴史を変えるほどのインパクトを持ち、文化や芸術にまで大きな爪あとを残しました。本書はこの戦いの歴史を興味深い資料とともに紹介しています。

　本書で取り上げる７大伝染病とは、マラリア、ハンセン病、天然痘、ペスト、梅毒、結核、新型インフルエンザのこと。意外なことに、このうち人類がこれまでに根絶したのは天然痘ただ一つ。他の伝染病との戦いはいま現在も続いているのです。

　著者の岡田晴恵さんは、『感染症が世界史を動かす』(ちくま新書)を書かれた際、せっかく面白い資料がたくさんあるのだから、それらをふんだんに使って、もっとビジュアル的な本ができるのではないかと思ったそうです。それが本書の出来るそもそもの発端です。

　現に岡田さんは、一五世紀のヨーロッパで黒死病(ペスト)が大流行した時、医師が伝染を防ぐために着けたカラスのくちばしのようなマスクなど、とてつもなく珍しい資料をお持ちでした。それもそのはず、岡田さんはドイツに留学した際、ヨーロッパ各地を取材して、伝染病に関わる様々な場所を撮影したり資料を集めたりしたそうです。もちろんそれらは、この本の中でもふんだんに使わせていただきました。

　本書を制作するうえで苦労したのは、いかに誌面を明るくするか。テーマがテーマだけに、どうしても見た目が暗く悲惨なものになりがちです。編集者としては、ちょっと大げさですが、世界史のロマンとダイナミックさも感じさせる本にしたい。そこで、極力カラーページには綺麗な写真を使い、本文中に地図を多用しました。

　学校で習う世界史の裏舞台で、「こんなに面白い事実があったのか！」と目で見て楽しみながら学んでいただけるものと思います。学校の副読本としてぜひお薦めです。