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編集者のアンテナ

和楽器の魅力を丸ごと伝えたい

河出書房新社    小野寺 優
(2009年12月発行 会報第119号より)
 「和楽器」というと皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。「何となく退屈そうで、私たちには縁遠い楽器」―――そんなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか?

 では、祭りの笛や太鼓ならどうでしょう? あの音を思い浮かべただけで何だか心躍る気がしますね。あれも立派な「和楽器」。そう、和楽器は私たちの生活に溶け込んでいて、実はいろいろな所で耳にしているのです。

 本書はそんな和楽器の魅力をひとりでも多くの皆さんに伝えたいという思いから生まれました。他国の楽器にはない独特の響き、ため息が出るくらい美しい姿かたち、そして、その仕組みにこめられた日本人の叡智。それをコンパクトに、かつ見やすく伝えたいと思ったのです。

 そこで大切にしたのは楽器のもつ「たたずまい」。写真の多くは、第一線で活躍されている楽器奏者や職人さんからお借りした楽器を撮影したものですが、その楽器のほとんどが超一流の職人さんによる手づくり品。目玉の飛び出るほど高価なものもあり、おっかなびっくりの撮影でした。琵琶や横笛の製作工程も驚くほど手のこんだもので、神経を遣う撮影の連続だったことが思い出されます。しかし、その甲斐あって、これまでにない貴重な写真を載せることができました。

 もうひとつ気を配ったのは「音」。少しでも具体的に「日本の音」を感じていただけるものにできないか。従来のように「当り鉦の音」「篠笛の音」と書くのではなく、「お祭りの時にカンカン聴こえてくる金属の音や横笛の音」と書けば、何となく感じていただけるのではないか―――本書の文章は、著者・西川浩平さんの工夫の結晶です。

 和楽器のもつ魅力は、とても本書一冊で伝えきれるものではありません。しかし本書を通じ、ひとりでも多くの方が和楽器に興味をもち、伝統芸能に触れてみようと思っていただければ、これほど嬉しいことはありません。
和楽器の世界 カラー図解
和楽器の世界 カラー図解
西川浩平/著
河出書房新社
1,470円

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