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編集者のアンテナ

豊かできれいな海を残すために

中央公論新社    酒井 孝博
(2008年9月発行 会報第115号より)
 「名も知らぬ遠き島より、流れ寄る椰子の実一つ……」(「椰子の実」島崎藤村)。四方を海に囲まれた日本の海辺には、さまざまなものが漂着します。椰子の実のようなロマンチックなものも流れ着きますが、実際に海岸に足を踏み入れてみると、発泡スチロールやペットボトルなどのゴミが圧倒的に多いことに気づかされます。これらの人工のゴミは、都会だけでなく全国各地の海岸に漂着しており、増える一方です。

  これらの海ゴミが増えるとどうなるのでしょうか。まず、海の生き物が被害を受けます。海鳥は、プラスチックの破片を餌と間違えて飲み込み、ゴミでお腹がいっぱいになって餌を食べることができなくなります。漁網にからみつかれて死ぬアザラシもいます。人間の活動にも影響が出ます。漁業資源が減少し、観光地の砂浜がごみだらけになります。しかし、法制度が未整備のため、回収は遅々として進んでいません。

  著者の一人である小島あずささんは、二〇年近く前に友人と「クリーンアップ全国事務局」を設立しました。このNGOは大勢のボランティアといっしょに全国の海ゴミの調査・回収をするとともに、各国の組織と協力して海ゴミの実態を報告し、改善策を提言しています。そのために小島さんは、春から秋まで、毎日、各地の海岸を飛び回っています。

  本書のもうひとりの著者である眞淳平さんが小島さんに出会い、海ゴミの深刻な現状について多くの人に知ってほしいと願ったことから、この本が生まれました。執筆にあたっては、そもそも海ゴミがどんなにひどい状況かを知ってもらいたいと、知床から沖縄まで全国各地を取材することからはじめました。そして、海ゴミの種類と影響、その対策まで海ゴミのすべてを紹介しようと努めました。

  「ふるさとは、海の村にはもう若者を育てる力がないという」(「海の匂い」岩間芳樹)。海ゴミの多くは陸上で暮らす私たちが排出しています。後世に豊かできれいな海を残すために、いま私たちになにができるでしょうか。
望遠鏡でさがす宇宙人
海ゴミ 拡大する地球環境汚染
小島あずさ/著
真淳平/著
中央公論新社
861円

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